
「新NISAが始まり、全世界株式への投資がブームになっている。でも、インデックスファンドだけで本当にいいのだろうか?」 「数あるアクティブファンドの中で、本当に信頼できる、哲学のあるファンドマネージャーに資産を託したい。」
こんにちは!マネーアドバイスセンター代表の志田です。
今回は、日本を代表するアクティブファンド「ひふみシリーズ」を運用する、レオス・キャピタルワークス株式会社の副社長であり、人気ファンド「ひふみワールド」の運用最高責任者でいらっしゃる湯浅様をお迎えしました。
「ひふみワールド」といえば、多くの全世界株式ファンドとは一線を画す独自の運用で知られています。特に、多くのファンドが掲げる「ベンチマーク(市場平均指数)」をあえて設定せず、独自の道を歩んでいる点は、多くの投資家が関心を寄せるところでしょう。
今回のインタビュー(前編)では、
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「ひふみワールド」は、どのような想いで誕生したのか?
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なぜ、頑なにベンチマークを置かないのか?その真意とは?
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市場を席巻する巨大テック企業(マグニフィセント・セブンなど)と、どう向き合っているのか?
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ファンドマネージャーとして、投資家へ提供すべき「本当の価値」とは何か?
といった、アクティブ運用の核心に迫るお話を、深く、そして熱く語っていただきました。
この記事を最後までお読みいただければ、「ひふみワールド」が単なる投資信託ではなく、日本の個人投資家の未来を真剣に考える運用チームの「哲学の結晶」であることが、きっとお分かりいただけるはずです。
それでは、湯浅副社長が語る、アクティブ運用の真髄に迫っていきましょう。
*撮影/インタビュー日は2024年2月
1. 「ひふみワールド」誕生の背景 ~“2000万円問題”と「円資産からの脱却」という使命~

志田: 湯浅副社長、本日はよろしくお願いいたします。まずは、近年の世界株式市場を振り返りつつ、「ひふみワールド」の運用についてお聞かせいただけますでしょうか。昨年は特に、米国の利上げ動向に世界が注目する、難しい舵取りが求められる1年だったかと思います。
湯浅様: よろしくお願いします。この1年を振り返りますと、「ひふみワールド」がその役割をきちんと果たせているな、と感じています。そもそも、このファンドがなぜ生まれたのか、というお話からさせてください。
ご存知の通り、レオス・キャピタルワークスは「ひふみ投信」「ひふみプラス」といった日本株式を中心に投資するファンドから始まり、多くの方々に日本株投資の魅力をお伝えしてきました。しかし、数年前に話題になった「老後2000万円問題」をきっかけに、我々の中で大きな課題意識が生まれたのです。
志田: 「2000万円問題」は、多くの国民が自身の資産形成について真剣に考え始めるきっかけになりましたね。
湯浅様: ええ。当時、藤野(レオス・キャピタルワークス代表)とも話したのですが、「我々はもう15年も運用会社をやってきたのに、日本の個人投資家の方々の資産形成に対して、何の役にも立てていないのではないか」と。このままでは、日本の個人の方々の家計金融資産を増やすための一助にはなりにくい、と強く感じていました。
日本の個人の方々の資産は、お給料はもちろん、預貯金、不動産、株式や債券に至るまで、そのほとんどが「日本円」建ての資産です。これは非常に大きな偏りです。そこで、円資産以外のものを手軽に持てるような投資信託を、我々が責任を持って提供しなければならない、と考えたのです。
志田: それが「ひふみワールド」の原点なのですね。「ひふみ投信」も一部海外株に投資はできますが、やはり日本株のイメージが強い。それとは明確に一線を画した、海外資産への投資に特化したファンドが必要だったと。
湯浅様: その通りです。日本株以外のところに投資をする投資信託を作ることで、皆様の資産を「通貨」の面からも分散させる。そして、長い目で見れば起こりうるであろう「円安」の局面においても、皆様の資産を守り、増やす一助となる。それが「ひふみワールド」に課せられた使命です。
結果として、この1年は、我々の銘柄選択による効果に加え、世界的な株価上昇、そして円安ドル高の恩恵も享受することができ、ファンドの役割をしっかりと果たせていると考えています。
2. ベンチマーク(目標指数)を置かない理由 ~アクティブファンドの“魂”を守るための哲学~

志田: 他社の多くの全世界株式ファンドと「ひふみワールド」を比べた時、最も特徴的なのが「ベンチマークを置いていない」という点です。月次レポートなどを見ても、MSCI ACWI(全世界株式指数)のような指数との比較がなされていません。これには、どのようなお考えがあるのでしょうか?
湯浅様: これは、社内でも様々な議論がありましたが、私自身が「ベンチマークは設けないし、それを比較対象として『こうだった、ああだった』と話すのは絶対にしたくない」と強く主張しました。
志田: それはなぜでしょうか?一般的には、ファンドの実力を示すためにベンチマーク比較は有効だと考えられがちですが。
湯浅様: もちろん、世の中にある数多のファンドの中で、自分たちのファンドがどの程度の位置にいるのかを分かりやすく見せる必要性は理解しています。しかし、それをやることによる弊害の方が大きい、と私は考えています。
ベンチマークを設定し、それを常に意識すると、何が起こるか。まず、投資家の方々の視線が、ファンドそのものではなく、インデックス(指数)に向いてしまいます。 そして、お客様がインデックスを見るようになると、我々ファンドマネージャーもインデックスを見ざるを得なくなるのです。
志田: 「インデックスに勝ったか、負けたか」という物差しで評価されるようになると、運用もそれに縛られてしまう、ということですね。
湯浅様: まさしく。日経平均やTOPIX、あるいはMSCI ACWIをベンチマークにすると、「なんとかインデックスを上回るように、もしくは負けないように」という思考が、運用の中で非常に大きなウェイトを占めるようになります。
そうなると、「インデックスで大きなウェイトを占めているGAFAMのような巨大企業は、パフォーマンスが乖離しないように、ある程度は持っておかなければならない」といった、忖度にも似た判断が生まれやすくなる。これは、もはやアクティブ運用ではありません。最終的には「じゃあ、インデックスファンドでいいじゃないか」という話になってしまい、本末転倒です。
志田: いわゆる「クローゼット・インデクシング(見せかけのアクティブ運用)」に陥る危険性ですね。
湯浅様: そうです。我々が提供したいのは、そういうものではありません。世界には、まだあまり知られていない、あるいは正当に評価されていない、多種多様で面白い会社が何万社と存在するのです。インデックスファンドは世の中にたくさんありますから、我々はそれとは全く異なる付加価値(アルファ)を、皆様にお届けしたい。
その“魂”を守るため、そして我々の思考がインデックスに縛られることを避けるために、あえてベンチマークとの比較をしない。これが、私の、そして「ひふみワールド」の哲学です。
3. ファンドマネージャーと資金流入 ~投資家との「共創関係」が未来を切り拓く~

志田: とはいえ、特に販売会社の立場からすると、ベンチマークがないと説明しにくい、という声も出てくるかと思います。また、私自身も、やはり資金が継続的に流入し、純資産総額が増加しているファンドの方が、運用は上手くいきやすいのではないかと考えています。資金の流入と運用の関係性については、どのようにお考えですか?
湯浅様: もちろん、資金流入は極めて重要なポイントです。これは、受益者数の推移を見れば明らかだと思います。はっきり申し上げますと、ファンドマネージャーというのは、投資してくださるお客様、投資家の方々がいなければ、何者でもないのです。皆様からお預かりした資金が、我々の投資活動を通じて、世の中を切り拓いていく力になります。
志田: 投資家との信頼関係が、運用の原動力になる、と。
湯浅様: はい。ですから、販売会社さんが「売りにくい」と感じるのであれば、我々はインデックスを使わずに「ひふみワールド」の魅力をしっかりとお伝えする努力をしなければなりません。それはレポートの作り方かもしれませんし、セミナーでの話し方かもしれません。様々な形で、我々の考えやファンドの楽しさをお伝えし、一つ一つのニーズに応えていく。
最終的には、運用成績が皆様の信頼の大部分を占めることは承知しています。しかし、それに加えて、運用プロセスや哲学への共感・賛同を得られるように活動し、結果として資産の増加を図っていく。これも我々の非常に大切な仕事です。
志田: 当初は直販(直接販売)を中心に純資産を増やしてこられましたが、今後は全国の銀行や証券会社といった販売パートナーとの連携を強化し、さらに裾野を広げていく、というフェーズなのですね。
湯浅様: そうです。投資していただく金額を増やしていきたいという想いと同時に、お一人でも多くの方々に「ひふみワールド」を知っていただき、投資を始めていただきたい。これは創業当初から変わらない我々の願いであり、営業活動における最重要ポイントの一つです。
4. 銘柄選定の流儀 ~「マグニフィセント・セブン」とどう向き合うか?~

志田: 昨今の株式市場は、いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる米国の巨大テック企業にお金が集中する、極端な展開も見られました。中には、アクティブファンドと謳いながら、組入上位銘柄がほとんどそれらの企業で占められているケースもあります。「ひふみワールド」では、これらの銘柄について、一部は組み入れ、一部は組み入れていないなど、特徴的なポートフォリオになっていますが、どのような考えで銘柄選定をされているのでしょうか?
湯浅様: 実は、ファンドを設定した2019年当初は、これらの銘柄を結構な割合で保有していた時期もありました。我々のスタンスは、「絶対に持つ・持たない」という固定的なものではなく、その時々の企業の状況や株価水準に応じて、組み入れたり、外したりする、非常にダイナミックなものです。
4.1 事例研究:テスラとジェネラック ~企業の「目的」を見抜く眼~

湯浅様: 例えば、よく「テスラは入っていないのですね」と言われます。結果として、その後の株価下落を避けられたので良かったのですが、我々が過去にテスラを保有していた時には、明確な理由がありました。
当時、テスラは単なる「電気自動車(EV)メーカー」と理解されていました。しかし、我々が実際に取材を重ねる中で見えてきたのは、彼らが目指す本当の姿でした。テスラは、「電力の効率的な利用方法を社会に提供する会社」なのだ、と。EVはその実現手段の一つに過ぎないのです。
志田: EVメーカーという枠を超えた、エネルギーソリューションカンパニーとして捉えていたのですね。
湯浅様: そうです。平時だけでなく、台風やハリケーンのような非常時においても、安全かつ安定的に電力を供給できる環境を作る。電気を「作る」「貯める」「効率よく使う」。これが彼らの本当の目的でした。
そして面白いことに、当時我々は、「ジェネラック(Generac)」という会社にも同時に投資していました。この会社は、家庭用の電源発生機や蓄電池を製造しており、いわばテスラの「電源部分」だけを手掛けているような企業でした。全米で頻発するハリケーンによる停電を防ぐための製品を提供していたのです。
志田: 目的は違えど、提供している価値の一部は重なっていたのですね。
湯浅様: はい。驚くべきことに、当時テスラはジェネラックの存在を知らず、ジェネラックもテスラを競合として意識していませんでした。しかし、両社は結果的に同じ方向へと事業を拡大させていき、特にコロナ禍で在宅時間が増え、家庭での電力使用量が急増した際に、両社の業績は飛躍的に伸び、株価も大きく上昇しました。
そして、我々はその株価が大きく上昇した局面で、両社のポジションを段階的に減らしていったのです。
志田: 素晴らしいストーリーですね。企業の表面的な事業内容だけでなく、その根底にある「目的」を深く理解し、市場が熱狂して株価が割高になったと判断したタイミングで利益を確定していく。まさにアクティブ運用のお手本のような事例です。
4.2 インデックス運用との決別
湯浅様: この事例が示すように、我々は「なぜ、この会社に投資するのか(しないのか)」という問いに対して、明確な理由を常に持っています。もちろん、株価は我々一人で決められるものではありませんから、市場の動向も見ながら、高くなれば売り、安くなれば買う、というアクションを繰り返します。
一方で、インデックスを重視する運用であれば、これらの巨大企業は、その企業の目的や業績動向、株価の割安度とは関係なく、「インデックスのウェイトがこれだけあるから、この程度は常に持っておこう」という判断になりがちです。
もし、インデックスのウェイトが高いからという理由で保有銘柄を外しづらくなるなら、それは恐怖心に負けている証拠です。それをやらないのが、我々ファンドマネージャーの仕事なのです。大きくなるから買う、というのであれば、私の存在は必要ありません。それはインデックスファンドで良い、ということになります。
5. ファンドマネージャーの存在価値 ~「ポートフォリオの穴を埋める」という仕事~

志田: 湯浅副社長のお話を伺っていると、ファンドマネージャーという仕事の、そしてレオス・キャピタルワークスという会社の存在意義そのものが伝わってきます。
湯浅様: 私はよく、自分の仕事を「ポートフォリオの中の穴を埋めていくことだ」と表現します。お客様の資産ポートフォリオ、そして社会全体のポートフォリオにおいて、我々の投資がどのような「穴」を埋め、どのような価値を提供できるのか。
究極の目的は、投資を通じて皆様の資産を増やし、より良い世の中を作ることに貢献することです。そのために、我々のフィルターを通して、投資先企業を深く理解し、市場との対話を通じて、最適なポートフォリオを構築していく。そして、その結果として多くの賛同者(投資家)を増やし、企業の株価が上昇し、皆様の資産が増える。この好循環を、地道に、愚直に、やり続ける。
それは時に、様々な方向にベクトルが向かう「ミッション・インポッシブル」のような仕事です。しかし、この難題に挑み続けることこそが、我々の仕事であり、お客様からフィー(信託報酬)をいただけている理由だと信じています。そして、それ以上の価値を提供して初めて、自分自身が納得できる。
志田: まさに、それこそが岩井様ご自身の、そして運用会社としての価値そのものなのですね。会社を創業された理由も、そこにあると。
湯浅様: はい、その通りです。そして、それは藤野も全く同じことを考えているはずです。
後編へ ~さらに深く、パーソナルな領域へ~

今回の前編では、「ひふみワールド」の運用哲学という、非常に本質的なお話を伺うことができました。湯浅副社長の熱い想いが、画面越しにも伝わってきたのではないでしょうか。
さて、対談はまだまだ続きます。後編では、
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「ファンドマネージャーである湯浅副社長ご自身の資産運用は、どうなっているのか?」
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運用会社を「創業する」ということの、ファンドマネージャーとはまた違う苦労とは?
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究極の質問「10年後、『ひふみ投信』と『ひふみワールド』、どっちが儲かっている?」
といった、さらに踏み込んだ、そしてパーソナルな質問にもお答えいただいています。アクティブファンドの舞台裏や、トップマネージャーの素顔に触れる、大変貴重な内容となっておりますので、ぜひ後編もご覧ください!
▼【後編】動画はこちらから
レオス・キャピタルワークス株式会社について
最後に、今回ご登場いただいた湯浅様が副社長を務めるレオス・キャピタルワークス株式会社についてご紹介します。
2003年の設立以来、「資本市場を通じて社会に貢献します」という経営理念のもと、主に日本の個人投資家に向けて、アクティブファンド「ひふみシリーズ」を提供。徹底した企業調査と、投資家との対話を重視する運用スタイルで多くの支持を集め、運用資産残高は1.3兆円(2024年3月時点)を突破しています。
中でも代表的な「ひふみシリーズ」の純資産額は1.2兆円(2024年3月末時点)を超え、日本の投信業界を代表するアクティブファンドの一つとして、確固たる地位を築いています。
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ここまでブログを拝読いただきありがとうございます。
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