動画「PERにとらわれお金がパー」
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PERとは何でしょう?
二人の男性に求婚された女性を例に思考実験
はじめに、あくまでも仮定の話としてちょっと想像してください。
あなたが未婚の女性だとして、二人の男性から同時にプロポーズされたとします。さて、どちらの男性を選ぶでしょうか?
どちらの男性を選ぶかを決めるには、人柄、家柄、学歴、容姿などいろいろと考える要素がありますが、そのひとつに、当然、経済力があると思います。
「その人の経済力はどのくらいなのか?」と考えることは、実は「2つの銘柄の株式のうちどちらを選ぶか?」ということに大変よく似ている部分があるのです。株式の銘柄を選ぶということは、「その会社の経済力をどのように評価するか」、ということとほとんどイコールであるとも言えるからです。
そうなると、そもそも「経済力」というのは何を意味するのかということが問題になります。
個人の経済力とは、普通は今現在の収入、そして、その収入が将来増えていくかどうかの見込み、すなわち成長性、それから、貯金の額、将来相続する見込みの財産などが思い浮かびます。
また、貯金の逆ですが、借金があるかどうかや、その額なども大事な要素であることは言うまでもありません。
PERは「現在」の「収益」に関する指標
PERは株式投資の最も基本的な指標と言われていますが、個人の経済力でいえば、「現在の収入」について分析するためのものなのです。将来伸びる可能性、言い換えれば、成長性があるかないかなどはまったく関係ありません。また、過去においてどうだったか、これも関係ありません。(実際には、過去があって初めて現在があるわけですが…..)今まで、順調に稼ぎ続けてきて、貯金がたくさん貯まっている、あるいは最近大失敗して多額の借金を抱えているという事情は、この指標には反映されません。
もう一度、結婚相手を選択する場面に戻ってみましょう。
例えば、その人の勤め先の会社が、世の中の流れにうまく乗っていて、とても儲かっており、ビックリするほどたくさんのボーナスを支給してくれたとしても、今の流行が終わればそのボーナスは半減するかも知れませんし、半減ならまだマシということだってあり得ます。
あるいは、その人が青年実業家で非常に高収入を得ていたとしても、その収入を得るために多額の借金をして大勝負を掛けているのかも知れません。うまくいっている間は、ものすごく儲かっていても、ちょっとした見通しの誤りで、気がつくと収入が激減して多額の借金だけが残る、などというのもありがちな話です。しかし、もしそんな悲惨な状況になったとしても、その人の実家が大金持ちだったとすれば事情は異なってきます。
このように、「現在の収入」だけを切り離して考えても、その人の経済力の全部を知ることが不可能であることは明らかです。株式の価値を考える場合も、同じように多くの隠された要素が抜け落ちているため、「現在の収益」だけではその株式の本当の経済力を知ることはできないということです。
PERの定義
さて、それではいよいよPERとはどのようなものなのか考えていきましょう。
PERとは、「Price Earning Ratio」 の頭文字をつなげたものです。
「Price」は値段です。何の値段かというともちろん株の値段、すなわち株価です。
「Earning」はどれだけ稼いでいるか、ここではその会社の収益のことです。
「Ratio」というのは割合、率です。
PERを 日本語で言うと株価収益率となりますが、それはPrice Earning Ratioをただ直訳して並べただけです。もう少し噛み砕いて言うとすれば、株価と収益の割合、すなわち、株価が収益に対してどの程度評価されているか、言い換えれば、株価は収益の何倍なのかという数値だということです。
以上を踏まえて、PERの計算式を見てみましょう
PER= (一株あたりの)株価
一株あたりの利益
ここで言う「株価」はあえて一株あたりと言わなくても株価は通常一株の値段です。
「利益」の方は、必ずしも一株あたりで表示されるとは限りません。株価を一株あたりで考えるのですから、それに揃えて一株あたりで見る必要があります。
PERの算出(具体例)
例えば、3000億円の利益を出している会社と、3000万円の利益を出している会社を比較してみます。
3000億円の利益は3000万円の10,000倍です。でも、これは「一株あたり」の利益ではありません。会社全体の利益で比べています。株価が一株あたりの値段である以上、利益の方も一株あたりに揃えなければ意味のある数値が計算できません。
仮に3000億円の利益を出している会社が3億株の株式を発行していたとすると、一株あたりの利益は、3000億(円)÷3億株です。したがって、一株利益は1,000円です。
今度は、3000万円の利益を出している会社が1万株の株式を発行しているとすると、
3000万(円)÷1万(株)で、一株あたりの利益は3,000円ということになります。
このケースの場合は、10,000倍の利益を上げている会社が1株あたりで比較すると逆に3分の1の利益に過ぎないということになります。会社全体で見れば、10,000倍の利益があったとしても30,000倍の株数が発行されているのですから、一株あたりの利益は3分の1になってしまうわけです。
一株利益(EPS)とは
今の例で、3000億円の利益を出している会社が3億株の株式を発行していた場合の1株あたりの利益を出しました。3000億(円)÷3億(株)で一株利益は1,000円でしたね。
このように算出した一株利益をEPSと言います。
一株利益(EPS)= 当期純利益➗発行株式数
また新しい言葉が出てきました。
EPSというのは、「Earning Per Share」の頭文字をつなげたものです。
「Earning」これは前述の通り、収益のことです。
「Per」とは、何々につき、~当たり、と言う意味です。パーセント(%)という言葉があるように、セントが100ですから、パーセントは100につきという意味です。
「Share」というのは持ち分ということです。この場合、株式の持ち分です。
PERは株価を一株あたりの利益で割ったものです。「A株のPERは何倍である」という言い方をします。
前述の通り、株価の方は一株あたりの株価が○✕円とすぐにわかりますが、一株あたりの利益の方は発行株数を考えに入れて計算する必要があります。
「計算する必要」などと聞くともうそれだけで面倒臭くなりますが、実際には一株利益を計算してくれている書籍(会社四季報など)や投資情報のウェブサイトも数多くありますから、それらを利用すればよいのです。
EPS算出には一年間の純利益を用いる
通常、この場合の「利益」というのは1年間の決算期における利益を言います。
まだ数字が確定していない現在の決算期における利益を使って算出するPERを「予想PER」と言います。
細かいことですが、利益という言葉には、営業利益、経常利益、純利益などいくつかの種類があります。今回は、PERを出す場合は「純利益」の数字を用いるということだけお伝えし、それ以上は踏み込みません。この辺は別の機会にお伝えしたいと思います。(「PER(株価収益率) 1-2」へ続く)